東北大学歯学研究科歯科医用情報学分野

先端巨大症(アクロメガリー)の口腔症状に関する研究

 先端巨大症(アクロメガリー)は成長ホルモンを過剰分泌する下垂体腺腫により発症し、 手足先端や舌、鼻翼などの肥大や肥厚、下顎前突など特徴的な顔貌を呈します。 アクロメガリーの症状は非常にゆっくりと何年もかけて進行するため、患者本人や周りのひと、さらには医師も気が付かず、 原因である成長ホルモン過剰分泌をみすごされたまま、症状や合併症の治療が行われることが多いのです。
 当科では、これまで咬み合わせの不調などを主訴に来院された患者で顔貌や他の症状からアクロメガリーを疑い、本疾患の診断に至った症例を複数例経験しています。 その後、当院脳神経外科と共同研究を行うこととなり、以下のラットを用いた基礎的研究と臨床研究を行って参りました。


「先端巨大症ラットモデルの開発」
 飯久保 正弘(IIKUBO Masahiro)
  平成18年 アクロメガリーフォーラム奨励賞 受賞
 小嶋 郁穂(KOJIMA Ikuho)
  平成18年 日本歯科放射線学会学術奨励賞 受賞
 熊坂 晃(KUMASAKA Akira)

世界で初めて開発した先端巨大症ラットモデルを用いた一連の研究です。
私達は成長ホルモンの成長促進作用の直接的役割を果たすIGF-1をラットに持続的に注入することにより先端巨大症ラットモデルを開発しました。 このラットモデルは、上顎骨や大腿骨に比べ下顎骨が著明に大きくなり、舌も大きくなるなど、先端肥大症の口腔症状と合致しています。 このモデルを解析した結果、①下顎骨肥大の原因は、顎関節を構成する下顎頭の軟骨細胞層の増殖によること、②舌肥大の原因は、舌を構成する筋線維の肥大および間質液の増加によること、③IGF-1投与を中止することにより、舌は元の大きさに戻るが、下顎骨は肥大したままになることが明らかとなりました。 この結果は、口腔症状のメカニズムを解明し治療法を選択する上で重要な成果と考えられます。今後、このラットモデルを活用して全身症状の解明など多方面に応用して頂きたいと願っております。



「先端巨大症患者の口腔症状の検討」
  田中 篤史(TANAKA Atsushi)
  飯久保 正弘(IIKUBO Masahiro)

 先端巨大症患者の顎顔面頭蓋骨の形態変化は過去に多くの報告がさなれていますが、いずれも正常咬合と先端巨大症との比較であり、 咬合不正を主訴に来院する下顎前突(ClassⅢ)患者と本疾患を区別することは困難と思われました。 当院を受診したClassⅢ不正咬合と先端巨大症の側方向頭部エックス線規格写真を用いて詳細に検討した結果、 先端巨大症では、ClassⅢと比べて上顎骨の前後径(A’-Ptm’)、口蓋平面の急傾斜(PP/FH)および下顎前歯の唇側傾斜(L1/FH、L1/MP)を伴っていることが明らかとなりました。 特に下顎下縁に対する下顎前歯の唇側傾斜(L1/MP)に着目することにより、先端巨大症とClassⅢ不正咬合の鑑別診断に最も有用であることがわかりました。

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