東北大学歯学研究科歯科医用情報学分野

研究紹介:頭頸部のMRI診断法の開発

「シェーグレン症候群の病因や診断に関する研究」
 阪本 真弥(SAKAMOTO Maya)
 小嶋 郁穂(KOJIMA Ikuho)
 嶋田 雄介(SHIMADA Yusuke)

 シェーグレン症候群は口や眼が乾燥する自己免疫疾患で、病因、診断、治療法などについて世界中で研究が進められています。 しかし、いまだに詳細な発病のメカニズムは不明です。 私達は、シェーグレン症候群の病因について長年の間研究を続けてきました。 唾液腺に潜伏感染するあるウイルスをネズミに注射するとシェーグレン症候群とよく似た唾液腺炎を発症すること、 シェーグレン症候群の患者様の血液の中に唾液腺細胞の細胞質に対する自己抗体が存在することなどを明らかにしました。


 シェーグレン症候群の画像診断には唾液腺造影(サイアログラフィ:唾液腺管に造影剤を注入してエックス線写真を撮影する)検査が用いられます。 シェーグレン症候群では唾液腺造影エックス線写真(サイアログラム)で導管周囲にたくさんの点状陰影がみられます。 この所見は木になったりんごにたとえて、"apple tree appearance"といわれ、シェーグレン症候群の診断に非常に重要な特徴的所見です。 しかし、サイアログラフィは熟練した技術が必要であること、患者さんに苦痛を伴うこと、時に造影剤が排出されず残留することがあり、 私達は、造影剤を注入することなく、同じような画像診断ができる MRサイアログラフィという方法を採用しています。 私達はMRサイアログラフィの撮像条件を詳細に検討し、細かな点状陰影や細い導管を鮮明に描出できるMRサイアログラフィを得ることに成功し、 MRサイアログラフィはシェーグレン症候群において唾液腺の診断、唾液量との相関に有用であることを明らかにしました。

Evaluation of pulse sequences used for magnetic resonance sialography.
Sakamoto M, et al. Dentomaxillofac Radiol 2001. 30: 276-284.

Diagnostic performance of MR imaging of three major salivary glands for Sjögren’s syndrome
Kojima I, Sakamoto M, et al. Oral Dis 2017. 23(1): 84-90. DOI:10.1111/odi.12577

Relationship of MR Imaging of Submandibular Glands to Hyposalivation in Sjögren’s Syndrome
Kojima I, Sakamoto M, et al. Oral Dis 2019. 25(1):117-125. doi: 10.1111/odi.12941.

Comparative study of multiple high-signal-intensity spots on 3D and 2D magnetic resonance sialography for patients with Sjögren’s syndrome
Shimada Y, Kojima I, Iikubo M. Radiol res pract. 2021 Dec 26;2021:5846637. doi: 10.1155/2021/5846637. eCollection 2021.



「唾液腺腫瘍のMR診断に関する研究」
 阪本 真弥 (SAKAMOTO Maya)
 小嶋 郁穂 (KOJIMA Ikuho)


 唾液腺腫瘍の多くは良性腫瘍ですが、稀に悪性腫瘍も発生します。 唾液腺腫瘍の第一の治療法は手術による腫瘍の切除ですが、悪性腫瘍の場合、良性腫瘍に比べて広く切除しなければなりません。 そこで、手術前に腫瘍の良性・悪性を鑑別することはとても重要です。 私達は長年、唾液腺腫瘍のMRI診断に関する研究を行ってきました。
 これまでに、水を極端に白くする条件で撮像したMRI(heavily T2 強調像)が唾液腺腫瘍の良・悪性の鑑別に有用であることを明らかにしました。 すなわち、唾液腺腫瘍で最も多い多形腺腫は、heavily T2強調像では腫瘍の実質が高信号(白く)みえるのに対し、 悪性腫瘍では低信号(黒く)みえる場合が多く、鑑別診断の一助となることがわかりました。
 造影MRIでは、造影剤の投与後に信号変化を時間的に記録しグラフ化すると腫瘍組織では正常組織と異なるカーブ(dinamicパターン)を有することがわかりました。 間質成分の多い多形腺腫では、造影後期でも信号が上昇する「漸増型」、Warthin腫瘍では造影早期に急上昇するものの、早く排出する「急増急減型」を示し、 悪性腫瘍では造影早期に急上昇し、そのまま増強効果が保たれる「急増プラトー、急増漸増、急増漸減」型が多いことが明らかとなりました。 この診断法は、術前診断に非常に有用であることがわかり、治療方針に取り入れられました。

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